| まず最初に。これから聴こうという人は、こんなレビューなど読まずに、ツアーページにリンクされているライヴ音源を聴くところからはじめて欲しい。それは、私がこのアルバムに対して少したりないなと思ってた部分が、ライヴでは余りあったから。よく出来ているけれど普通のハードロック、だけじゃない妙なパワーが、いくつかのライヴ音源にあったから。 じゃ、何がよくできていて、何がたりないなと思ったのかという話をしようと思う。 大方の予想に近い出来:バイオのページでも書いたけれど、アルバム発売前からデモ音源流出など話題いっぱいだったこのバンド。 色々ある間、メンバーのキャリアを知る誰もがどんな音になるのか予想したと思う。 RATMのバックトラックにSOUNDGARDENのボーカルが乗る、というのはある意味想像し易いスタイルだし、音楽の方向も近いバンドどうしとも言えないこともない。 原物を目の前に出されると圧倒される:これはもうメンバー個々が持っているプレイヤーとしての力量だとか、存在感だとか、そういう評論不能の領域の話で、私はそもそもあまりレヴューめいたものを 書くのは得意でないのだが、やっぱりこういう作品の前では、感想を語る言葉というのはあまり思い浮かばない。私なりに無理に言葉にすると… 曲としては新機軸で、先に書いた予想の範囲の外をゆく"Hypnotize"は、リズム隊がすてき、ローレンジで攻めて来るChris、Tomのギターソロなどなど全員のパートが一つの曲を作り上げてるなと得に感じた。 "Gasoline"(のコードな感じとリフの共存から来る曲展開だとか)、"Bring em back alive"、"Light my way"はまさに90年代の修羅場をくぐり抜けて来たバンドの出すエッジなのかもしれない。曲の重さと、Chrisの歌の持つある種の 爽快感がヘンにマッチ。 Chrisがソロアルバムや、かつてのプロジェクトであるTEMPLE OF THE DOGなどで見せた雰囲気やコードが近い感のある曲、"I am the highway"、"Getawat car"、"The last remaing light"などなどは、この底暗さドライさと、情緒と美しさの共存!やっぱりChrisの音楽ってば美学の世界だー、と、唸ってみたりだとか(すいません本気です)。 逆に"Cochise"、"Set it off"などが持つ刻まれる(Tom特有の変な音の)リフからテンションが爆発していくような感じは、RATMを経た彼らならではのものだし、"Show me how to live"あたりが持つ複雑なグルーヴ感と、サビでハイテンションに引き上げる曲の良さも印象的。 細かなところまで良く出来ていて、なんといっても威風堂々という形容が相応しいアルバム。 このメンバーならではの保証の範囲内:私がこのアルバムを聴いて、「Chris Cornell復活!嬉しい!」というヒイキをおいたとして、最初に思ったのは、もちろん好印象を持ったし愛聴盤にもなるが、まだバンドとしては先があるんじゃ無いかということだった。良く出来ているけれど、それはまだ保証された地力であって、その先にあるものこそが、これがバンドとしてやる例のTom Morelloが繰り返して言う「Chemistry」なんだろうと。 それにしたって、10回目に聴いてもまだ飽きることもない成熟した出来だったりすることなんかもあって、そここそが他を許さない地力の差なんだと思うが。 まだまだ先があるはず:思えばSGにせよ、RATMにせよ、結構奇跡的に良いバンドだった。色々なことがタイミング良く動いたり、本人らが、方向性につまづくことなく着実に変化していて、それが作品の変遷に現れたり。 にも関わらず、彼らを余人から引き離すだけの破綻や過剰さがバンドにあった。メジャーなメロディの上に全部の楽器がガンガン鳴りまくり度を越してやかましかろうが、 緊張感が高い状態が続き過ぎて中だるみしてしまいそうな曲構成だろうが、なんでもいい。そういう個性と呼んでも良いしアクと呼んでも良いし、このメンバーでやるからこそ現れる突出したところ、そしてそれと矛盾すること無いバンドの変化成長。それがその「Chemistry」とやらだったんだろうと思う。 そもそもそういう尖り振りというのは、これから成功する若いアーティストにしかないものかもしれないし、今あっても私が感じ取れていないだけなのかもしれないし。これだけのキャリアというなら、この良作は安定として歓迎すべきなのか。人によっては安定とも、破綻がないなどという感想とは、正反対の意見を持つだろうし、この内容でこれ以上何が必要なのか、と問われれば言葉もないんだが。 ライヴ音源で時に聴けた、「ベテランだから」だけじゃない何か突き抜けた感じ。巧いとか何とかいうレベルですらない訳の分からないテンション。それが結実したものが、次作でスタジオバージョンとして聴けるんじゃないかと、私は思っている。 ( kaolly.2003.2.16.) |