ジュリアン・テンプル監督の1980年公開作品。マルコム・マクラーレンの意向で撮られたアングラテイストな珍品映画で、Sex Pistolsのバンドドキュメントの体裁を取る。
内容、傾向はWikipediaの項がとても詳しいです。
■Wikipedia:The Great Rock'n'Roll Swindle
状況主義というのはよくわからないのですが、この映画でのマルコムの主張って、現実と四つに組むことなく世渡りをしていくことが目的ってかんじよね~...。
というのも、21世紀現在において、いいトシした堅気の勤め人であるわたしの感想なので、この際仮定もまじえていこう。
中学生くらいで正しくパンクにはまっていたなら、これはありだ、ともちろん思ったハズ。18歳くらいでJ Mascisの「やる気ないから1999年で世界が終わってくれないと帳尻があわない」という発言を本気で取ったわたくしですし。
また、後だしじゃんけん的に「全て私が仕組んだこと。想定内。バンドは瀕死だったから美学にのっとって息の根を止めた」と言い切っちゃうのは楽ちんだし、何より格好がつく。
懲りないんだ、こういうこと言う大人は。どこか世の中をなめていて人生楽しそうだ。
とはいえ、当たればでかいがリスクも巨大な人には言い訳がいるよなというか、ともかく自分の行動を肯定する自分の中での担保が必要。
とは思いましたが、マルコムの場合、言い訳レベルの甘っちょろさではなく、本気で信じてる節が...それだけでもスゲぇ。
(参照:こちらのサイトさんのライドンについてのお話や英国のお話はとても興味深いです。私がライドンにはまったきっかけもこちらの記事でした。)
だから、山師はいやだなーきらいだなーとも思いつつ、マルコムのタイプは分かる。ジョン・ライドンのごとき鉄の心臓を持ったマトモすぎるリベラリストの方がいない。
永遠の宿敵、ライドンvsマクラーレンの話は、マトモに自由に生きることが一番強さがいるんだとも思います...。
映画に話をもどして次行きます!↓
めぼしいみどころは大体Youtubeに転がっていますが
見所は、スティーヴ・ジョーンズの小芝居と、同じくスティーヴ&ポール&シドのPVですかね。ジョンが「歌詞忘れた」の「こんな曲最低!なんか他にマシな曲やれねーのかよ」のと、ブツブツと文句言いまくる"Johnny B.Good"のカヴァーなど、サントラが聞き所ありすぎ&狙いすぎハズしすぎで面白いです。後述します。
あとバンド結成後の話で出てくる"No Feelings"の超絶かっこいいスタジオリハーサルの模様。ロックんろーる最高!素敵!!てろてろ素材の細いスーツに丸襟のシャツ、水玉ネクタイ!ロットンのおしゃれ小僧ぶりには卒倒だ!このコーディネートが一番好き。ヴィヴィアン・ウェストウッドのスタイリングかな。アイドル。
他、Pistolsヒストリーの部分は面白い。可愛くもこきたないアニメを交えて楽しいです。
ジョニー・ロットン脱退後のSexPistols
珍品すぎてハズしすぎなシーンの数々としては、いきなり南米のビーチでくたびれたオッサンと演奏始めたりとか。
このオッサンは、列車強盗の逃亡犯、ビル・ヒッグス。本物の生ける犯罪者とレコーディングなどしたら面白いに違いないとやったことだそうです。
劇中劇シーンも、スティーヴが端から女の子をこましまくるところが見所といえば見所。
そして、あの有名なシド・ヴィシャスの「My Way」PVも劇中劇として製作されたもの。歌詞はシナトラオリジナルと大体同じらしいですが、実際のシドの運命に重ねて観ない人はおるまい...伝説ってこんなところで作られるんだね。他のPVでは、薬の影響かなにかなのか、顔がむくんでて、こんな日に撮影って〜という感じだけどね...。
サントラの中でもいくつか歌ってるTen Pole Tudorというボーカリストも、あまりにテンぱりすぎてて、見てて不安に。おまえ倒れて死ぬんか。
私はジョンのファンなんだよ!アニメでもいいからジョンを出せ!でも出てこないからスティーヴ・ジョーンズ(でずっぱり)を中心に鑑賞しました。
日本のパンク黎明期にブートビデオで出回ったとか
とまあ、前半がみんな知ってるPistolsのお話、後半が「ジョニー・ロットンは裏切り者だからクビ」となった後のさほど有名でない話、というふうに別れます。ジョンの抜けたあとは、マルコムがやりたいようにやりだして、現実のバンドは迷走するんですが、映画もすごい迷走ぶりです。もちろん、グダグダになる後半がこの映画ならではの見所。
劇中劇映画"Who Killed Banbi?"をスティーヴが映画館で見出したあたりになると、あまりの自己パロディとグダグダ脚本のアマチュアぶりがすごくて、これはこれで見応えが。
80年代に物心ついた世代の私には、この映画の手作り感覚そのものが80年代のサブカルチャーのイメージで、ひどいなーと思いつつも懐かしい感じ。
80年代のジャパニーズパンクス予備軍の少年少女は、
これみてPistolsかっこいい以外にわけがわかったのかなあ。いやそれだけでも充分なんだけどさ。
わたしが15歳だったとして「ふざけんな金返せ」か、「これこそパンク」とあっさり信じてお調子者になるかのどっちかでは...というか、ハハァ、マルコムはこうした意図で作ってんだな、という、チャンプな見方以外出来ない今のわたし自身も残念です...。
ひょうたんから駒≒伝説化
これに比べれば、マトモなバンドドキュメンタリー「No Future」は、より実像に近づきながらも、韜晦してる部分が一切なくなってしまっている。メンバーは今のイメージは全然バンドと関係ないところで語られたウソだから、現実はこの程度で悪うございましたね、と開きなおってもいる。
ジョンは,ヒッグスとのレコーディングの案に対して、「あのオッサンは政府の金を盗んだんならともかく、郵便局員の給料の乗った列車を襲った労働者の敵だからやらね」と、鋭くもノリの悪い返事をしたそうで、それもマルコムの不興を買ったらしい。
最初の頃、マルコムのお気に入りは、頭の回転が速く皮肉なジョンだったらしいけれど、この頃は可愛さ余って憎さ1000倍だったみたいで、ジョンをひっこめてシドをプッシュしようとしだしたため、ジョンはムカつき、シドは勘違いをする(ジュリアン・テンプル談)。
このシドの勘違いからマルコムは色々発想してったんじゃないかなあと思った。
弾けないことが価値と言われて調子にのったシドの拡大版が、この映画に出て来るアマチュア軍団なんでは。
確かに、サントラ「The Great Rock'n'Roll Swindle」の頃には、演奏陣はすでに盤石の体制で、ジョンがいなくても結構いいバンド。そこで、フロントマンなんか誰がやっても同じだぜ、ということでか、カラオケレベルのシンガーをコーラス毎にとっかえひっかえしているタイトル曲"The Great Rock'n'Roll Swindle"が出来上がったんでは。ヴィシャスコンセプトだー、とサントラを聴いてると思います。
あ〜これ。町蔵(町田康)のいう、アマチュアが好き勝手にできるのは素晴らしい。だがお陰で町には不快な素人演奏があふれかえり、私の頭痛はなおりません。みたいなアレか...。
マスコミを利用して悪名を高めよう、というのも、偶発的に起きた「ビル・グランディ・ショー」での放送禁止用語連発事件の反応を見てイケル、と思ったのが最初らしいので。別に作為があって起こしたわけではない、とはスティーヴの談。(泥酔してたし...)
サントラは映画よりケイオス
もちろん、例え達者であろうとも、ジョンがいなくては全然別バンドでして、それはまあ置いた上で、というカオスなサントラはなかなか面白いです。半分はジョン在籍時のアウトテイクだし、 スティーヴ&ポールがボーカルのアウトテイクは凄くいいし、シドの曲も聴いてるうちに結構いいよ!と思っちゃう。
※どうですよこのエヴァーグリーンぶり。Pistolsになかった青春ロックンロールがここに...!
でも、このバージョンはスウィンドルのサントラのバージョンじゃなくて、ベスト盤収録のバージョン。映画ではポールが歌ってた。わたくし、完全にスティーヴ・ジョーンズのファンになっちゃいまして、彼のPistols以降の仕事も全部聴けそうなので、その感想も書きたいです。

- Sex Pistols
- The Sex Pistols
- Virgin Int'l 2002-06-10
こうしたアウトテイクを含め、正式メンバーとして関わった5人の演奏だけで作られたBOXがある今、先述のTen Pole Tudorやら"Anarchy In The UK."のディスコバージョンやらは興味がない限りは聴かなくてもいいかもーとも...
マルコムの趣味って、音そのものも込みで、すべての意味で時代のあだ花って感じがする。当時は新しかっただろうネタが、今聴くとおそろしく軽佻浮薄で、そういうあだ花もまたうつくしという感覚で聴くと、このサントラも嫌いじゃない。割に。
1780/1977
映画冒頭で流れる時代劇の部分は、1780年のゴードンの騒乱といわれる歴史的事件で、プロテスタントの狂信的牧師による反カトリックの暴動事件の再現。これには多くの無政府主義者も賛同したという。これを1977年のPistolsに端を発する混乱に重ねあわせた部分は、この映画の創作シーン中、最もクールな部分だ。(参考:sex pistols archives/18世紀の死刑執行人Ⅱ)
労働者階級の若者や子供を主人公にしてこの時代のイギリスを描いた作家、チャールズ・ディケンズの名前は、映画でのマルコムのナレーションでも、ジョン・ライドンの自伝でも目にする。
図らずも、ロットンを「ディケンズ風の餓鬼」と評したマルコムの発想どおり、彼は、労働者たちを搾取して大もうけしたディケンズ描く中産階級の資本家そっくりにバンドを利用して、退場したのだった。
そして、そうは問屋がおろすかよということで、メンバーは最後には彼にひと泡ふかせることになる。小説のように、いきなり金持ちの叔母さんが現れて助けてくれたりはしないので、自力で権利をもぎ取ってしまう、可愛くもけなげでもないけどDIYなオリバー・ツイストたち。
あまりにも出来過ぎ。Pistolsは英国文学の香りがするよ。ほんとに。70年代になってもディケンズまんまの世界だったということのような気もする。
白状すればそういう根性に憧れてるからこんなにハマるんだと思う。私は、色々夢を投影してるんだよ。Sex Pistolsに。かくありたいよ。
こうした、バンドの引き起こした社会的状況を、歴史や国民文学に重ねあわせるという視野は、マルコム・マクラーレンその人のもの。
あらゆる音楽を片っ端から聴き、本を読みまくっていたというジョン・ライドン少年も、おそらくはそういう視野やセンスに好感を抱いていたんじゃないかしら。"Anarchy in The UK"の歌詞を読むとそう思う。
似た者同士で角をつきあわせていたとはポール・クックの談だけれど、確かによく似ている。決定的に違ったのが現実との付き合い方だったんじゃないかなーという感じがした。
「偉大なるロックンロール詐欺師」のお話は、まあ少なくとも再結成の所までは続いているようです。
詐欺師の反撃があるなら、ちょっと見てみたい気もする。

- Great Rock N Roll Swindle (Ac3 Dol)
- Sex Pistols
- 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント 2005-05-31

- The Great Rock 'n' Roll Swindle
- The Sex Pistols
- Warner Bros / Wea 1992-11-2
