「孔子暗黒伝」の文庫版には、参考文献一覧が出ているのですが、そこの2番目に表示されているのが白川静(wikipedia)の「孔子伝」。
漢字の成り立ちで古代中国を、ひいては日本の基層文化を解き明かす研究をされていた学者さんで、じゃあ読んでみるかと思ったのですが、家になんかありそうだなーと思って探してみれば、家人の買った別冊太陽の白川特集がありました。
メインは梅原猛との2本の対談、「陰陽師」の岡野玲子との対談、そして日本の古い祭りを白川流漢字の読み解きで解説するグラビアです。
梅原猛との対談では孔子をテーマにしたものがあって、そこで語られている孔子像は、「孔子暗黒伝」に出て来る、理想家肌で理想に破れた姿がそのまま。
また、「孔子暗黒伝」では妖怪となって彼を付け狙った政敵・陽虎の現実的な政治家的性格と照らし合わせ、理想家の孔子を「革命家」と位置づけるのですが、そこもまた、学生運動の嵐が吹き荒れる時代に「孔子伝」を書いた白川先生の視点に時代性が感じられます。
孔子が始祖となる儒家の思想も面白い。
葬儀・典礼を司った儒家はもともと、旱魃が続くと雨乞いの生贄にされる身分であり、湿り気を期待されるだけに「儒」という「雨を求める人」という意味の漢字が使われるという。
生贄の身分に、普段の仕事は葬儀屋である儒家の教え「儒教」は、漢の時代になると国教に制定され、保護を受ける身分となる。
ここで思い出すのは、三国志などで良く書かれる腐敗した後漢の政治形態は、宦官による傀儡政治だけではなく、儒家的な推挙のシステム(地元の名士に拾い上げられることから出世の道がはじまる、コネのみのシステム)で、というか私にとっての三国志上の儒教とは「蒼天航路」の曹操による儒家一掃の数々のエピソードや、儒家である側近・荀彧との決別なわけで、色々合点が行きました。
雨乞いの生贄で葬儀屋、髷を結わないザンバラ髪(つまり士人とは言えない身分)の儒家の始まりを読むと、「蒼天航路」で描かれた「儒家とは密やかで悲壮な生き物です」という視点は、かなりシンパシーのあった描き方だったようです。
話を諸星的なものに戻すと、中国の歴史の中での王朝の移り変わりと、それぞれの民族に伝承された神話が今知られる中国神話としてどのように変遷したかという話から、古代農耕国家の「殷」と、日本の縄文農耕文明の相似も紹介される。どちらも農耕民族の神と思想を持つ国。
「孔子暗黒伝」のハリ・ハラが最後には日本の島根にたどり着くパースペクティヴ。
中国の歴史にもうといので、色々読んでいると「ああこれは「太公望伝」に出て来たエピソード」なんて思い出したりして刺激的でした。
次はちゃんと著作を読んでみようと思います。
あと、たまたま諸星作品にはまる前に読み返していた梅原猛や中西進による南方文化の本が、「海神記」の復読本としては役立った話でも。

- 白川静の世界―漢字のものがたり (別冊太陽)
- 平凡社 2001-11

- 蒼天航路 (29) (モーニングKC (908))
- 王欣太
- 講談社 2003-10-23

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